著作権の基本の「き」

「著作権」という言葉はよく聞くけれど、いまいちどういう権利なのかわからない…
そんな方も多いのではないでしょうか?

たとえば、自分の投稿を誰かにパクられた、有名フォトグラファーの写真が勝手にTシャツのプリントにされてる、人気キャラクターが無断でアイコンにされた――著作権は、こうした身近なケースで問題となります。
昨今では、生成AIと著作権の話題に注目が集まっていますね。

このように著作権は、日常的に関わってくる重要な権利。
だからこそ、基本の「き」をマスターしておきましょう。

著作権とは何か?

著作権とは、「著作者が、自分が創作した創作物(著作物)の利用を認めたり禁止したりすることができる権利」をいいます。
要は、自分の描いたイラストを自由に使えるし、誰かに「使ってOK」といえるし、無断で使ってる人に「使うな」といえる権利ですね。
自分が創作した創作物の利用を独占できる強力な権利です。
著作権は創作した瞬間に自動的に発生し、登録は不要です。

著作物とは?

著作物とは、「文芸・学術・美術・音楽などで、人の思想や感情を創作的に表現したもの」をいいます。たとえば絵画、イラスト、漫画、音楽、小説などが典型例ですね。
この定義、結構重要なんですよ。
なぜなら著作権で保護される「著作物」に当たらなければ、それをパクッても著作権侵害にならないわけです。
だから元ネタを使いたい、マネしたいと思ったら、まず元ネタが著作物に当たるかどうかを検討しましょう。

・「思想や感情」を表現したもの
まず、「思想や感情」を表現したものです。「思想」「感情」というと何か高尚なものが必要のようにも聞こえますが、そうではなく、個性や世界観くらいの意味合いでとらえていただくとわかりやすいかと思います。
思想や感情を表現したものである必要がありますので、思想や感情を含まない単なる事実やデータは著作物にあたりません
たとえば「富士山の標高は3776mです」は単なる事実・データですので、著作物には当たりません。

・「創作的に」表現したもの
この「創作的」は一般に何らかの個性が発揮されていればOKとされています。
たとえば、幼児の描いたイラストにも創作性が認められます。
他方、ありふれた表現やパクリ表現、誰が創作しても同じになる表現などは「創作的」ではないので著作物には当たりません。
たとえば「こんにちは」みたいな定型的なものが典型例ですね。

・「表現」であること
「表現なのは当たり前じゃない?」と思われるかもしれませんが、ここが非常に重要なポイントです。
著作権はあくまで「表現」に発生します。
逆にいうと、表現の裏側にある(つまり具体的に表現されていない)設定や作風、世界観、タッチ、アイデアそのものは著作権では保護されません。ここはわかりにくいですよね。
たとえば「赤いリボンを付けた猫の女の子」というアイデアそのものには著作権は発生しませんので、赤いリボンを付けた猫の女の子のイラストを自由に描くことができるわけです。
他方、皆さんがイメージする「キティちゃん」のイラスト(表現)そのものには著作権が発生しますので、キティちゃんと同じ・よく似たイラストを描くと著作権侵害の可能性があるということになります。

「文芸、学術、美術または音楽の範囲」に属すること
著作権法には、具体的な著作物の例として、小説、音楽、絵画などの美術、映画、写真、コンピュータープログラムなどが挙げられています。

著作権と著作者人格権

実は、著作権は、狭い意味での「著作権」と「著作者人格権」という権利で構成されています。
上でも触れたとおり、著作物は作者の個性や世界観を表現したものですから、著作物をとおして作者の人格が表現されているわけですよね。著作者人格権というのは、この作者の人格を守る権利です。

著作権、著作者人格権とも、実は細かい権利(これを支分権といいます。)の総称なんですよ。花束みたいなものをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
たとえば、著作権は「コピーする権利(複製権)」「ネットに送信する権利(公衆送信権)」などの総称です。
で、作者は、支分権を丸っと誰かに譲渡したり利用を許諾することもできますし、一つ一つの支分権をバラバラに譲渡したり利用を許諾することもできます。
「著作権侵害」というのは、この支分権のどれかの侵害ということですね。

著作者人格権も「名前を載せるかどうか決められる権利(氏名表示権)」などの総称ですが、著作者人格権は作者の人格に結び付いた権利ですから、譲渡することはできません。この点が(狭い意味での)著作権との大きな違いです。

どんな場合に著作権侵害になるのか?

著作権侵害になるのは以下の場合です。

・① 元ネタをもとにして制作したか(依拠性)
まず、元ネタをもとにして制作していることが必要です。
ここ、結構驚かれるのですが、たまたま似ていただけで参考にしていない場合は著作権侵害にはなりません。
ただ、ここは「見てない」といい張ればよいというものではなく、どの程度似ているか、元ネタを参考にしないと創作できないか、元ネタの公表時期等も踏まえて判断されることになります。

・② 元ネタとよく似ているかはどう判断するか?
ここが最も難しいポイントです。
私見ではありますが、裁判所は2つの作品を比較してこんな感じで判断しているようです。
 ◆ アイデアが同一 →似ていない
 ◆ 表現じゃない部分や創作的じゃない部分が同一 →似ていない
 ◆ 創作的部分に表現上の本質的な特徴を直接感じ取れる →似ている!

著作権侵害にはあたらなくてもご注意を

なお、著作権侵害の問題とは別に、著作権を侵害していない場合でも、元ネタの著作者の方が「いやだな」「やめてほしい」と思う使い方をした場合にはトラブルになる可能性が大なので気を付けて。
ただ、著作権侵害とマナーの問題とはわけて考えたほうがよいと思います。

巷には著作権について誤解した内容もよく見られるところです。
皆さんには、ぜひとも正しい著作権の知識を身につけていただけたら嬉しいです。

Photo by Wesley Tingey on Unsplash

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