「他人のツイートをスクショして投稿することが著作権侵害に当たる」との裁判例が話題になりましたが(本サイト「ツイートのスクショ投稿は著作権侵害?」で取り上げました)、なんと控訴審でこの判断が覆されました。
つまり、スクショ貼り付けツイートも著作権侵害には当たらない可能性があるということ。
ここのところ同様の判決が続いていますので、控訴審の判決を少し詳しく見ていきたいと思います。
まず、事案について簡単におさらい。
TwitterユーザーであるAさんとBさんは、Xさん(原告)のツイートをスクショし、これを貼り付けてツイートしました。これに対し、XさんがNTTドコモに発信者情報開示請求をしたというものです。
争点についてもおさらいしておきましょう。争点は大きく次の2点でした。
① Xさんのツイートが著作権法で保護される著作物に当たるか?
② Xさんのツイートのスクショを貼り付けてツイートすることが、著作権法上の「引用」にあたるか?
このうち、①の著作物に当たるかどうかについては、控訴審でも第一審とほぼ同様、Xさんのツイートは著作物であると判断しました。
①の判断については本サイトの「ツイートのスクショ投稿は著作権侵害?」もご覧ください。
今回結論を分けたのは②の「引用」にあたるかどうかです。
「引用」にあたるための条件はおおむね以下のとおりといわれています(議論あり)。
a 公表された著作物であること
b 引用する側とされる側が明確に区別されていること
c 引用する側がメイン、される側がサブ(主従関係)
d 公正な慣行に合致するものであること(出所の明示、引用される著作物の表現・内容を歪曲しないこと)
e 報道、批評、研究その他引用の目的上正当な範囲内(その著作物を利用する必要性)
さて、控訴審はどのように判断したか。
d 公正な慣行について、
「ツイッターの規約では、ツイッター上のコンテンツを複製したり修正したり二次的著作物作ったり配信などする場合にはツイッターが提供するインターフェースと手順を使わなくちゃいけないとされてて、ツイッターは他人のコンテンツを引用する手順として引用ツイートという方法を設けてるじゃん。」
ここから控訴審は、第一審とは異なることを言っています。
「でもさ、そもそもこの規約は本来的にはツイッター社とユーザーの間の約束で、その内容がストレートに著作権法上の引用に当たるかどうかの判断で検討される公正な慣行の内容になるわけじゃないよね。それにさ、他のツイートのスクショを付けてツイートする行為が規約違反に当たることも認められないでしょ。」
話はそれますが、第一審の判決が出たときに「元ツイが消されたら引リツしても意味なくね?」といった声がツイッター上でも多く聞かれました。
実は控訴審では、この点についても触れています。曰く
「批評に当たって引用リツイート機能を利用することはできるけどさ、元ツイが変更されたり削除されると消えたり変更されちゃうわけで、批評の趣旨を正しく把握したり批評が妥当か検討できなくなるおそれがあるよね。
他方で元ツイのスクショを貼り付けてツイートする場合は、そういうおそれを避けることができる。で、現に他のツイートのスクショを張り付けてツイートするのはツイッター上で多数行われてるよね。
以上を踏まえると、スクショ貼り付けという引用の方法も、「公正な慣行」に当たり得るといえるよ」
その上で、控訴審は、
- AさんBさんの投稿は、Xさん投稿(スクショ)を批評する目的で、それにあたりスクショを貼り付けた(と認める余地がある)
- その態様も、引用する本文と引用される部分(スクショ)が明確に区分されている
- 引用の趣旨からすると、引用されたXさん投稿の範囲は相当な範囲内といえる
とした上で、以下のように結論づけました。
「Xさん投稿のスクショ貼り付けはいずれも著作権法上の引用に当たるかその可能性があり、Xさんの著作権を侵害することが明らかと認めるのに十分とはいえないよ」
やや歯切れが悪いように見えるのは、本件が、著作権侵害による損害賠償請求の場面での判断ではなく、発信者情報開示請求での ”権利侵害の明白性” の判断だからですかね。
本件は発信者情報開示請求での判断なので、著作権侵害による損害賠償請求の場面にそのまま当てはまるわけではありませんが、スクショ貼り付けだからといって即「著作権侵害」になるわけではなく、個別の判断で著作権法上の「引用」に当たることもあるといえそうです。
なお、「スクショ貼り付けが全面的にOKになった」というわけではないので、誤解なきよう。